遙かな過去から現在に至るまでのワタクシメの恥ずかしいかもしれない産物を(ある程度)赤裸々に公開してしまおう!と。
「魔人」10
 指先から銀色の糸のような物が出ているように見えた。
 一瞬のうちに、その銀色に光る糸は相手の影の中に入っていた。

 「冗談じゃないですよ、ククク。」

 楽しそうだった。
 いや、少なくとも私にはそいつが楽しんでいるように見えた。
 あいかわらず表情には何の変化もなかったが。

 相手はあの美しい人だった。
 こんなに明るい昼間だというのに、二人ともまるで影のように暗い色をしていた。

 最初はわからなかった。

 「そいつ」がスッと私の前に背を向けたまま出てきたので、初めて何かが現れたのだとわかったが、その時点ではまだ、私には何も見えてはいなかった。
 「そいつ」は、出てきたと同時にもうすでに指先からあの銀色の光を出していた。
 それを見て、初めて「なにかヤバイ相手がいるんだな」と気付いた。

 ふとそいつの背広の袖先を見ると、三角形にスッパリとなくなっている部分があった。

 「あの時にやっぱり切られてたんだ。」

 そう、あれ以来そいつが私の前に現れるのは初めてだった。しかしこういう時に瞬時に現れるところを見ると、どうやら私から離れていたわけではなさそうだった。

 そいつの指先の銀色の光が、ある影の中に入っていた。
 その瞬間、あの美しい人はその姿を現したのだった。
 それまではそんなところに、その美しい人はいなかった。
 いや、見えなかっただけか。

 世界にもその名を知られている観光の街。
 そんな市内でも昼間は一番人通りが多いであろう場所であり、時間帯だ。
 多くの人の影に隠れて見えなかったとしても不思議ではなかった。
 しかし、私には自信があった。

 「こんなに美しい人が私の50メートル以内を歩いていたら、絶対に見逃すはずはないわ!」

 「例え私の後ろを歩いていたとしても!」

 どんな自信だか。
 思わず自分でツッコミを入れていた。
 そんな私の思いとは裏腹に、そいつと、その美しい人は私の前でにらみ合っていた。
 二人ともその場に凍り付いたように。
 美しい人は更にその表情を美しくゆがませて。

 はぁぁ~。

 私は溜息ばかり。
 しかし、そいつの指先から出ている銀色の光が、すでにその美しい人の影に入っていた。
 美しい人は日本刀をまたいつの間にか左手に持っていたが、その一瞬で怪訝そうに眉を寄せていた。

 あぁ~、なんて素敵な表情かしら~。

 私はただただその美しい表情に見入るばかりだった。
 ほんの少し悩ましげなその表情は、私を夢中にさせるには充分だった。

 はぁぁ~

 溜息ばかりが出た。
 こんなに美しい人を苦しめるなんて!
 私は「そいつ」に対して燃え上がるような怒りを覚えていた。

 「なるほど、そういう手ですか。」

 そいつがそう言った途端、空いた方の手で、私にもそいつは指先の光を向けていた。

 キィィィーン

 頭の中でそんな金属音がこだましていた。
 耳鳴りにも似ていたが、そんな生やさしいものじゃなかった。
 何も聞こえなくなっていた。

 「これでも手加減しているんです、少し我慢していて下さいね。」

 そいつの声だけは頭の中ではっきりと聞こえてきた。
 手加減?
 意味はわからなかった。
 考える余裕もないほどひどい耳鳴りだった。

 「ククク。」

 そいつはまた楽しそうに笑っていた。
 いつも通り表情も変えずに。



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